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                菜の花の変遷           吉田 龍司


風光明媚な菜の花公園(長野県飯山市)



菜の花や月は東に日は西に   与謝蕪村

 この句は安永3年(1774年)旧暦3月(新暦4月下旬)に六甲山地、摩耶山を訪れた時の句で、太陽が西に沈む夕暮れ時、月が東に見えると云う事は、その月は満月だという。

 春の夕方、菜の花の香りが辺り一面漂うような、何とも大らかな絵画的俳句である。

 春が近づくとテレビ各局は菜の花の風景を競って放映し、春の象徴としているかのようである。確かに「ナノハナ」は「サクラ」と共に春の風物詩である。数年前まで私もよく県外のナノハナを求めてツアーを企画し、旅して来た。

 多くの人は、「ナノハナ」は日本固有の植物と思っているようだ。その「ナノハナ」の真実について綴ってみることにした。

 「ナノハナ」は「菜種(なたね)」とも「油菜(あぶらな)」とも呼ばれているのは先刻承知のことである。ナノハナは「花」に、ナタネは「種子」に因(ちな)んだ名で、菜種(なたね)から油を採ることに由来する。
 この3つは必ずしも同一種ではない。「ナノハナ」は時代と共に変遷し、江戸時代の「ナノハナ」とは異なるのである。アブラナ属の原種の一つはブラシカ・カンペストリス(Brassica campestris)で地中海沿岸に自生する植物である。染色体数は、体細胞で20本(2n=20)。セイヨウアブラナは別種の「菜種」プラシカ・ナプス(B.napus)といい染色体数は(2n=38)。染色体数の組をゲノムで表すと、アブラナ群はAAゲノムで、セイヨウアブラナ群はAACCゲノムである。Cゲノムはキャベツと同一のゲノムで、セイヨウアブラナはアブラナ群とキャベツ群の雑種に起源するそうである。

 現在日本で栽培する「菜種油」はセイヨウアブラナで、在来の「ナタネ」は島根県菜種島など、ごく一部の地域でしか栽培されていない植物になってしまった。

 現在花屋に出回る花材の「ナノハナ」は、在来のナタネでもセイヨウアブラナでもない植物である。染色体数(2n=20)でAAゲノムだが、ハクサイ群に所属し、結球しない葉の縮(ちぢみ)が目立つチリメンハクサイ系とされる植物である。

 長野県飯山市は童謡『朧月夜』の舞台であり「なのはなの里」と名乗っている。然しその「ナノハナ」は驚くなかれ、漬物に使われている「野沢菜」の事だという。

一概に「ナノハナ」と云っても、時代や場所によって種類が異なる事を知って置くべきであろうか…。



ゲノムとはある生物が持つ総ての染色体を1組分だけ取り揃えたもの。即ち単相の細胞に含まれる全染色体をいう。通常の生物の体細胞は2組のゲノムを持つことになる。
H.ウィンクラーの提唱した (1920) 用語であったが,木原均はこれを別の見方から定義し直して,その種が正常に生き続けていくのに必要な一揃いの染色体の組をゲノムと呼んだ。




 
           赤城山覚満淵の景観甦る             吉田 龍司        
 

 密林化し展望を欠いていた鳥居峠から覚満淵を望む県立赤城山自然公園の景観が、県自然環境課の英断により一部伐採されて復活した。

 2015年10月5日赤城南麓森林組合により、ダケカンバが除伐処理(約80本)され、覚満淵から五輪尾根方面の眺望が復活した。赤城山を訪れる人の喝采を得ている。

 森林の管理には二通りある。手を付けてはならぬ森林と、ヒトが積極的に管理する森林とがある。景観を重んじる自然公園は当然後者であるのは云うまでもない。

 かってこの地は、赤城南麓から赤城山鳥居峠へ登る主ルートであり、参拝を目的とした人々が利用してきた。人々は見通しの悪い山道をひたすら登り、やっと峠に達した時、眼下に広がる景観を見て「極楽浄土だ!」として崇め奉った場所だったという。

 その当時の赤城山頂一帯は総て草地であり、高木は疎らであったと諸書の記録にある。

 以前鳥居峠直下は赤城大洞地区の屎尿捨て場であり、冨栄養化と植物遷移により陽を好むダケカンバの森と化し、観光スポットとしての地位も損なわれてきた。

 県行政の管理予算不足か、はたまた自然保護の考え違いからか、永い年月、手を付けないできた県立自然公園の管理放棄の姿を再認識することとなった。

   
伐採前の景観 伐採後の景観

東武鉄道は水沼駅から利平茶屋間をバスでつなぎ、利平茶屋~赤城山頂駅(鳥居峠)に1957年(昭和32/6)ケーブルカーを敷設して営業。最盛期には年間224,000人ほどの人が利用した。しかし前橋~赤城大洞間に有料道路が開通してケーブルの客が奪われ、1967年(昭和42/6)廃業して今日に至っている。(距離約1㎞、高低差363.3m)


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