マルダイゴケ / 中澤 和則
野反で初めて出会ったマルダイゴケ。この高山性のコケは動物のフンの上に生育する変わったコケである。胞子の詰まった蒴からはハエなどを呼び寄せる臭いを放ち、胞子にも粘性があることで、新しいフンに胞子をしっかり届けている。気づかないで踏みつけている小さなコケもこんな技量を秘めている。
新種のカエルを見つけた!/金井賢一郎
”いた!”上野村山中の沢、冷たい渓流の中にそれをみつけた時は思わず声がた。それとは「ナガレタゴガエル」。他のカエルと違って、冬の冷たい流れの中で繁殖する珍しいカエルである。鳴のうがなく、水かきが大きく繁殖期の雄の脇腹はひだ状にたるむなど独特である。この新種のカエルは、1978年2月に東京奥多摩の日原川上流で発見され、11月の学会で発表された。そこで県内でも生息するのでは、という期待で1979年の晩秋から調査を始め、2シーズン以上経た1981年4月に先の発見につながったものである。最初の発見者である松井先生に同定を依頼し、間違いないとわかって、この4月に先の発見につながったものである。最初の発見者である松井先生に同定を依頼し、間違いないとわかって、この4月5日は私にとっての「カエルの日」となったのである。
【写真】水中の雄の成体。体調43ミリ。
繁殖期の皮膚のたるみは著しく、特に皮膚はひだ状となる。
覚満淵のカルガモ / 片山満秋
覚満淵の池にカルガモが飛来して繁殖し、観光客が餌を与えたので2000年頃から急激に増えて40羽以上になりました。与えられる餌では不足のため、他の地域では見られない、潜水摂食をする行動も行いヤマアカガエルやアズマヒキガエルとそのオタマジャクシを捕食し激減させました。また、潜水して水底をかき回したので浮葉植物のヒルムシロやジュンサイと、水底一面に生えている群馬県の絶滅危惧種「ヒメミズニラ」が水面に数多く浮き上がり枯れました。しかも油のようなカルガモの排せつ物が水面を覆い、腐臭さえ漂いました。2013年現在のカルガモは10羽前後になりましたが、カエル類は減少したままで、浮葉植物は現れず、またシマイシビルの出現・増殖という“みやげ”も付きました。いったん変化した生態系の回復は困難でしょう。
スミレ / 里見哲夫
私が最も関心を寄せているスミレに「エイザンスミレ」があります。このスミレは冬の葉と夏の葉が全く異なりますし、花の色も大変変化に富んでいます。シロバナエゾスミレは白花で、株全体が緑色をしています。 変種にヒトツバエゾスミレがあって、白花種をナルカミスミレといいます。 また、雑種の多いことで知られているスミレでして、キクバノジスミレ(エイザンスミレ×ノジスミレ)は私が発見したものです。 その他、スワスミレ(エイザンスミレ×ヒカゲスミレ)、オクタマスミレ(エイザンスミレ×ヒナスミレ)、フイリオクタマスミレ(エイザンスミレ×フイリヒナスミレ)等も見つけています。今も雑種を追い続けているところです。
アザミ(薊)/吉田 龍司
アザミは北半球には250種以上分布し、日本には50種以上の種類があるが、普通「アザミ」といった場合、ノアザミ(Cirsium Japonica)を指す。草丈50~100cm、5~8月が開花時で『本草図鑑 1828年』江戸時代の出版で棘のある植物として広く知られた。アザミは「あざむく」が語源。「きれいな花!」と近づき触れるとチクリと刺される。もっと凄いのはエコなる花粉の仕掛け。花は花弁5枚の筒状花の集まりで、雄蕊の花粉は花の下方にあり、訪れた昆虫の刺激に反応し、雄蕊が下がって花粉が押し出されてくる。花粉の表面はベトベトして昆虫に付きやすい。この仕組みは風や雨から大切な花粉を守っているのだと考えられている。
都市のハヤブサ / 谷畑藤男
ハヤブサは海岸の断崖を好み繁殖します。生態系の上位に位置する猛禽で、群馬県では稀な鳥でした。ところが21世紀に入り、高層ビルや巨大な鉄塔が建設されると、都市に飛来するハヤブサが出現しました。高さ約百mの高崎市庁舎ではビル上部にとまり、獲物を狙うハヤブサが見られます。ハヤブサは視界を通過するハト大の鳥類を発見すると、高所から落差を利用し、高速飛翔で追いかけます。空中で捕らえた獲物は、ビル上部で羽根をむしり、肉を食べます。ハヤブサが落とした羽毛を調べると、多くはキジバトやドバトですが、アオバトやトラツグミなど意外な渡り鳥も捕食されています。「市街地上空を多数の渡り鳥が通過している」ことや「都市や地球は人間だけのものではない」というハヤブサからのメッセージが聞こえます。
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